みなさん、こんにちは!keitrip/須田 恵斗です。
電車に乗る場合は、駅で切符を購入、近年普及してきた「suica」「PASMO」などのICカードを利用する際は、改札機に入場記録を付けて乗車しますよね…
今回は、首都圏を走る「きっぷ無し」で乗れる路線に乗ってきました。
地方のローカル線などである、下車時に車内で精算したり、車内で車掌から乗車券を購入したりと言う訳でもなく、本当に電車に乗ってから降りるまで、乗車券を買わなくても乗れる路線です。
今回紹介する路線は「きっぷ無し」で乗れる以外にも、面白い要素がいっぱいありますので、それも紹介します。
始発駅
ここは、JR横浜線と東急田園都市線の合流駅、長津田駅です。
今回乗る路線は、この長津田駅から出る「こどもの国線」です。
外に出られない”乗換改札”では無く、”通常の改札”の西改札から駅構内を出て乗換のようです。
出口の先に、こどもの国線の駅があるようです。ということで、降りて行きましょう。
出口を目指したら衝撃的な光景が…
なんと階段を下りると、通常のホームに出ました。駅から出たのにホームの中にいます。
こどもの国線は、駅の外にある7番線から発車です。「駅の外にあるホーム」と言うパワーワード…
これが出口です。ホームと出入り口の間に改札が一切ありません。
駅の外から見るとわかりやすいです。出口から直接ホームに、そしてホームにある階段から、田園都市線と横浜線の駅舎に向かいます。
こどもの国線に乗る場合は、目の前にあるホームからそのまま乗り込みます。
長津田駅にも、「そのままご乗車ください」と表記がされています。
こどもの国線の長津田駅に改札が無いので、7番線ホーム上や、西改札口付近に「きっぷ回収箱」があります。
こどもの国線に乗車
7番線にこどもの国行きの電車が到着。車両は、こどもの国線専用車両のY000系(読み:ワイケイ)です。
2018年より運行を開始した「うしでんしゃ」ラッピングとなります。
他にも、2020年に運行開始の「ひつじでんしゃ」と、従来通りの通常塗装車両の3編成が走っています。
この「うしでんしゃ・ひつじでんしゃ」は、路線の由来となっている「こどもの国」のPR電車です。
こどもの国に併設されている、雪印こどもの国牧場では、実際に約30頭の羊や約40頭の牛が飼育されており、動物とのふれあい体験や乗馬、乳絞りができます。
車内は、こどもの国にある牧場をイメージした床で、普通の電車ながらとてもワクワクします。
扉もカラフルな牧場のデザインで、車内の雰囲気をより高揚させます。
運転台は、T字型ワンハンドルマスコンの採用で、他の東急の電車に近い作りとなっています。
長津田駅発車
長津田駅を発車。20kmぐらいでノッチオフして、半径165mのとてつもない急カーブを曲がっていきます。
上から見るとこんな感じです。留置線が隣にあるので、まるで鉄道模型の世界にいるかのようです。
そして直線区間に入り、60km近くまで一気に加速。周辺を見ると住宅が広がっています。
恩田駅に近づくと田園風景が広がってきます。
そして減速してカーブを曲がると、なにやら謎の線路が見えて来ました。
そして、最近まで営業運転を行っていた田園都市線の8500系が見えてきます。
複数の線路を見ながら1面2線の途中駅、恩田駅に到着です。
先ほど見えていた建物群は、東急テクノシステム長津田工場で、主に東急の電車の改造工事や、解体車両の搬出場所として使われています。
東急電鉄の重要な工場は、こどもの国線の恩田駅にあるのです。
恩田駅を発車します。
その後、ウネウネとカーブを進んでいきます。
こどもの国駅到着 運賃を支払う
そしてゆっくりとこどもの国駅に入線。
長津田駅から8分で、終点・こどもの国駅に到着しました。1面1線の小さな駅で、隣にはこどもの国の駐車場があります。
ここで、忘れてはいけないのは、運賃をまだ支払っていないことです。ということで、運賃を精算しましょう。
駅の自動精算機です。左上には、長津田駅乗車の精算メニューがあります。
精算していきます。こどもの国線の運賃は160円です。この処理は、途中の恩田駅でも一緒です。
「きっぷ」ではなく、「精算済証」が出てきました。
「乗車券」を持たずに乗る、和田岬線や東武大師線では、乗車駅発の乗車券が発券されますが、
こどもの国線では、これ以上先に進めないのと、改札を通る回数が一回なので、精算済証として発券がされるのだと思います。
長津田駅の西改札口に券売機がありますが、ここでは、東急線各方面への乗車券の他、
こどもの国線の乗車券を事前に購入することが可能です。
つまり、運賃を先に払っても、後に払っても、どちらでも構わない方式となっているのが、非常にユニークなところですね…
ということで、こどもの国方面へ歩いてきましょう。
こどもの国 アクセス以外の深い繋がりとは
駅から歩いて3分、こどもの国のゲートにやってきました。
こどもの国は、1965年に開園したレジャー施設ですが、開園する前は「東京陸軍兵器補給廠田奈填薬所(田奈弾薬庫)」でした。
つまり、陸軍の弾薬庫だったのです。
園内には、弾薬庫があった洞窟や換気塔が至る所で見ることができます。
そして先ほど乗車した、こどもの国線は元々は弾薬庫への引き込み線として建設されたのでした。
こどもの国線って東急?横浜高速鉄道?どっちなの
こどもの国駅を見ると「東急電鉄」のロゴがあります。なので、東急電鉄の路線価と思いきや…
駅構内の看板には、東急のロゴではなく、別のロゴが書かれています。
電車のロゴは、東急ではなく、謎のロゴです。
このロゴは「横浜高速鉄道」のものです。横浜高速鉄道と聞くと、鉄道に詳しい方ならわかると思いますが、横浜~元町・中華街を結ぶ、みなとみらい線の運営会社です。
運賃表を見ると、同じ東急というくくりなのに、まるで他社線として扱われているかのような感じで、運賃が跳ね上がったり、割引運賃が設定されているのが分かります。
こどもの国線のきっぷを買う際は、長津田より先は「のりかえきっぷ」を押さないと購入が出来なくなっています。
こどもの国線は、横浜高速鉄道が線路と車両を保有する「第三種鉄道事業者」として、
東急電鉄が、実際に列車を運行する「第二種鉄道事業者」として、営業をしています。
こどもの国線のY000系は、横浜高速鉄道の車両です。整備と所属車両基地は、東急の長津田検車区となっているようです。
そのため、東急線全線乗り降りし放題の「東急線ワンデーパス」では、東急が運営していることになるため、こどもの国線に乗車することができます。
こどもの国線の少し変わった歴史
こどもの国線として営業してからの歴史も面白いので解説します。
1967年に弾薬庫への引き込み線を活用してこどもの国線が開業しました。
当初は、社会福祉法人こどもの国線協会が路線を保有、東急電鉄が電車の運行に協力をしていました。
こどもの国への専用路線としての性質が強く、休園日は列車本数が大幅に削減されてる運行形態でした。
当時は東急7200系アルミ車や東急7000系などの車両が使われていたそうです。
その後、周辺が宅地化し、通勤・通学として使う側からすれば、大変不便な状態です。
そこで、こどもの国線を通勤路線化するのですが、公益法人のこどもの国協会が、鉄道事業に本格的にかかわるのが問題とされました。
1997年に、こどもの国協会が保有している路線(線路や設備)を、横浜高速鉄道へ譲渡がされ
1999年にはY000系が運行を開始、2000年には交換可能な途中駅・恩田駅が開業し、通勤路線化がされて、現在の形となります。
まとめ 首都圏屈指のヘンテコ路線
このこどもの国線は、
- 長津田駅からは「きっぷ」を持たずに乗れる
- 元々は弾薬庫への引き込み線だった不思議な歴史を持っている
- 東急電鉄であり横浜高速鉄道でもある不思議な運営形態
- 個性豊かな可愛い2両編成の電車が走っている
- 東急の工場へアクセスする超重要路線
と、3駅全長3.7kmの小さく地味ながらも、他の鉄道路線にはない、ヘンテコ路線となっています。
東急ワンデーパスで乗りつぶしの際は、こどもの国線にも乗れるので、ぜひ乗ってみてください…
2019年11月10日の「東急電車まつり」では、池上線・多摩川線の7000系がこどもの国線で営業運転、通常は2両はY000系は重連で4両編成で走ったそうです。
なにか大きなイベントが行われる際には、このような特別な運転が見られるので、いつか訪れてみたいところ…
話が長くなりましたが、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。