みなさん、こんにちは。keitrip/須田 恵斗です。今日は、超貴重なのに穴場な意外な列車の紹介です。
今の日本の列車は、ほとんどが電車か気動車で、自分の動力を使って動きます。
かつて国鉄時代では、今の貨物列車と同様に、機関車に引っ張ってもらって、走る客車列車も多数走っていました。
しかし、令和になった今の客車列車は、SL列車などの観光列車のみとなっており、
外観や車内も観光列車らしく大きく手が加えられたものが多く、普通の客車列車が多数現役だった頃の雰囲気を味わう事ができなくなっています。
今回は、国鉄時代の雰囲気をほぼそのまま残しながら走る、超穴場の客車列車に乗ってきましたので、その様子を紹介します。
大間々駅 貴重な姿の客レに乗車
ここは、わたらせ渓谷鐵道の車両基地などがある重要な駅:大間々駅です。
国鉄時代とほとんど変わらない姿を保つ客車列車は、この大間々駅が起点です。
今回乗る貴重な客車列車は、構内踏切側にある0番線から発車します。係員に520円で購入した乗車整理券を見せて列車に向かいましょう。
そこには、茶色い客車が停まっているではありませんか。
紹介するのは、わたらせ渓谷鐵道の看板列車「トロッコわたらせ渓谷号」です。
トロッコ列車は日本各地で走っているタイプの観光列車で、窓が無く、座席も通常の車両とは異なっています。
つまり、国鉄時代の姿とか全く関係ないと思いますが、今回乗るのはトロッコ車両ではなく、その両端についている普通の窓ガラス付きの車両です。
普通の窓ガラス付きの車両が、全国的に見て貴重なのです。
その客車列車に乗車
先に人気の名物車両を紹介
0番線から「トロッコわたらせ渓谷号」に乗車しましょう。
座席は、木のベンチとテーブルが置かれており、編成中間に2両連なっています。
2号車には、自販機が備わっています。
このトロッコ客車は、わ99形5020・5070を名乗っているですが、
トロッコ車両になる前は、日本全国に譲渡されている電車、京王5000系なのです。
電車から客車に改造されるなんて、なかなかに変わった車歴の車両ですね…
側面の銘板には「デハ5050」と表記されています。
列車の面白ポイント1 ほぼ原型の車内
トロッコ車両の両側 1号車・4号車の控車に乗車しましょう。
この控車は、大阪万博に際して輸送力を確保するために開発された急行型客車 12系です。
今も残っている12系の大半は、SL列車に供するため、木目調の壁面・赤や緑の座席モケットなど、旧型客車をモチーフにした、車内に改造されていますが、
こちらはほとんど座席に加えられていない青いモケットのまま残っています。
窓も下段が最後まで上昇する状態となっており、これも昔と変わりません。
座席に関して、手が加えられてる部分があるとすれば、テーブル下の栓抜きが撤去されているくらいです。
この青いモケットがずらっと並ぶ光景めちゃくちゃいいですね…
4号車にあるトイレも、ほとんど手が加えられていない、無機質な銀色のトイレ
トイレの反対側にある洗面台。ボタン類もほぼそのままですし、隣には、今の鉄道車両では見かけない痰壺があります。
列車の面白ポイント2 牽引機関車がDE10
1号車から前方を除くと、ディーゼル機関車 DE10と連結していることがわかります。
前方に行くと、力強く引っ張る機関車がいるのは、客車列車特有の面白い魅力です。
鉄道ファンの多くは、普通客車列車と聞くと、DD51やDE10が引っ張っているイメージが強いかと思いますが、現在走っているそれに近い雰囲気の客車は、大半はSLが牽引しています。
DL等が牽引する。観光列車化改造していない客車に乗れるのは、全国的にみても貴重であり、面白いポイントでもあります。
同じ群馬県内、JR東日本の12系でも、DLが引っ張るという機会は少ないので、DLが牽引する12系を確実に乗りたかったら、わ鐡をオススメですね。
9時20分頃 大間々駅に行くと、牽引機関車 DE10 1537が発車準備のため、車止めの近くまで入線しているのを確認できます。
また、わ鐡が保有してるもう一両の機関車、DE10 1678号機は、国鉄時代の赤い塗装となっており、これが充当されると、もっと国鉄の普通客車列車の雰囲気を味わえるかと思います。
列車の面白ポイント3 自由席で、車内が空いてて席が選び放題
「トロッコわたらせ渓谷号」のトロッコ車両は、往路の3号(足尾行き)は座席指定制。
復路の4号(大間々行き)は座席定員制となっており、車両も混雑して満席の日が多く、自由に席を移動することが出来ません。
一方の窓ガラス付き車両、特に乗車口から遠い4号車は、あまり人が来なくて、座席も選び放題です。
そのため左右の景色を、座席を転々としながら楽しむことができます。
また、他の鉄道路線で運行されている客車列車は、座席の指定を受けるところがほとんどです。
このように座席の指定を受けない、自由に席を選び放題というのも、昔の普通客車列車のような感じで、なかなか貴重で面白いポイントの一つです。
10時54分 大間々駅発車
10時54分 汽笛を響かせて、大間々駅を発車しました。DE10の重低音で響くエンジンの駆動音と、キーンと唸るターボの音が客車前方から響きます。
発車後すぐに、進行方向右側には、渡良瀬川に架かるはねたき橋が見えます。
そして、はねたき橋付近から、観光客が手を振って見送ってくださいました。
森に隠れてますが、はねたき橋を過ぎると、高津戸ダムが見えてきます。早速、渡良瀬川の渓谷の景色が始まりました。
付近には、美しい高津戸渓谷があります。朝早くに大間々駅に訪れて、渓谷を散策するのもいいでしょう。
DE10を目の前に、森林浴走行を楽しみます。THE ローカル線客レという感じで良い雰囲気です。
昔ながらの車内から、流れゆく緑の景色が最高です。
徐々に水面よりも高い位置に移動し、山々を背景に、渡良瀬川の渓谷が、ずっと進行方向右側に流れます。
乗車日時は11月02日、紅葉シーズン真っ盛り。
美しい渡良瀬川の渓谷と黄色く染まる紅葉が大変美しく、トロッコ車両では乗車されている観光客が、写真を撮り楽しんでいました。
私は「国鉄旧足尾線時代は、静かでゆったりとした雰囲気の中、景色が流れていたのかな」と、国鉄を全く知らないながら、感慨に浸って楽しんでいました。
用水路が見えてくると、最初の停車駅:水沼駅に到着します。
列車は最初の停車駅:水沼駅に到着しました。
この水沼駅には、「水沼駅温泉センター せせらぎの湯」が併設されており、渡良瀬川の渓谷を見ながら、ゆっくり温泉に浸かることができます。
また、わたらせ渓谷鐵道の1日フリー乗車券を提示すると、入湯料が2割引きになります。
水沼駅発車後、桜の木が埋まっていることが、トロッコの車内放送で案内されます。
この水沼駅周辺は、春になると桜の名所となり、桜とトロッコ列車等を一緒に撮影できる場所の一つです。
また、DE10の後ろまでやってきました。茶色と黄色のDLと、流れ去る紅葉が最高です。
DLの背後から覗き込んで見る、渡良瀬川と治水施設もたまりません。
花輪駅を通過しました。花輪駅から歩いて15分~20分くらいの国道沿いに、丸美屋自販機コーナーがあります。
この自販機コーナーでは、なかなか見かけなくなった、うどん・そば・ラーメンやトーストの、レトロ自販機が設置されており大変人気です。
この旅の道中、丸美屋自販機コーナーに立ち寄って、ラーメンとうどんを食べました。
もうまもなく、神戸駅に到着するところですが、ここで「進行方向左側をご注目ください。この先のトンネルを抜けたところで、汽車見の滝と呼ばれる小さな滝の目の前を通過します」と車内放送が行われます。
そして、速度が5kmくらいまで落ちて、機関車の汽笛が聴こえると、汽車見の滝が見えてきました。ゆっくりと言っても、小さな滝なので一瞬で通り過ぎます。
滝の前を通過して、ゆっくりとトンネルを通過すると…
神戸駅到着
列車は神戸駅に到着しました。一部のツアー客はこちらで下車されるようです。
神戸駅に到着です。関西の兵庫県にある都市「神戸」と同じ字を書き、読み方が大きく異なる難読駅名として有名です。
この神戸駅は、東武特急「けごん」に使われていた1720系DRC(デラックスロマンスカー)の廃車体を使った「レストラン清流」があり、
うどん・そば、舞茸ごはん定食等を、ほぼそのままの姿を保っている特急の車内で頂くことができます。
また、浅草から相老・赤城までやってくる特急りょうもう号に使われている200系電車は、この1720系の床下を流用しています。
レストラン清流といい、特急りょうもうといい、日光駅からこの先の通洞駅までを結んでいるバスと言い、日光との関わりが深いですね…
この神戸駅も、紅葉シーズンで、赤や黄色に染まる紅葉に囲まれていますが、
春の桜シーズンになると、桜と花桃の名所となり、ホームも花でピンク色に染まります。
今年度は、新型コロナウイルスの関係で開催中止となりましたが、神戸駅花桃祭りが4月に開催され、
開催日には、乗車中のトロッコわたらせ渓谷号に、トロッコ整理券無し(整理券料金不要)で乗れる「花桃号」が運転されます。
葉が落ちている花桃の木を見ながら、神戸駅を発車。発車後、「この先、全長5242mの草木トンネルへ入ります。
強い風が吹き込んでくるので、トロッコ車両の方は荷物が飛ばされないように注意してください。
また、窓ガラス付き車両の方は窓を閉じてください。」と注意喚起のアナウンスが行われました。
そして、草木トンネルに入ります。前方からDE10がエンジンとターボの音を響かせながら、トンネルを走行。
トロッコ車両では、トンネルでしばらく景色が見えないことを活かして、天井にてイルミネーションが行われています。
この普通車両は、まるで夜汽車のような雰囲気です。
今通り抜けている草木トンネルは、1973年 草木ダム建設に伴う線路付け替えにより完成した、
全長5,242mもの長大トンネルで、神戸駅側の入り口と沢入駅側の入り口で高低差が140mもあります。
10分ほどかけて、ゆっくりトンネルを通過すると、第一渡良瀬川橋梁を渡り、またトンネルへと入ります。
大間々駅発車後、ずっと進行方向右側を流れている渡良瀬川も、ここでようやく左側に移ります。
目の前に現れる紅葉を見ながら、沢入駅に到着します。
この沢入駅は、駅舎に簡易郵便局が併設されている駅です。
また写真のような、昭和初期にタイムスリップされたかのようなレトロな待合室があり、 待合所及びプラットホームが登録有形文化財として登録されています。
こちらも神戸駅同様、紅葉で赤く染まって、レトロさも相まって、まるで鉄道模型の世界のような駅ですが、
毎年7月頃になると約2,200株のあじさいが駅構内を彩る、あじさいの名所でもあります。
沢入を発車後、乗車に使ったトロッコ整理券が、巡回する車掌によって回収されます。
列車は沢入駅発車後、次の原向駅までの間、わ鐡で最も景色の良い区間を通過していきます。
また、地形に沿うように走るため、急なカーブが至る所に点在し、国鉄時代で最も急なカーブとされた、半径144mの坂東カーブがこの区間に存在しています。
渓谷の中に点在する、大きな白い石は、地元特産の御影石(花崗岩)だそうです。
野生動物が多数出没する区間で、たまに急ブレーキがかかることもあるそうです。
原向駅を通過し、庚申川と渡良瀬川がぶつかる地点で、川を渡ると….
進行方向左側に、足尾銅山通洞選鉱所跡が見えてきます。この危なそうな雰囲気の廃墟がたまりません。
列車は足尾銅山関連の観光の中心地、通洞駅に到着しました。足尾の中心地・観光の中心地という事もあり、大半の乗客がここで降りられました。
旧足尾銅山の坑道を利用した足尾銅山観光や、古河足尾歴史館など、様々な面から、足尾銅山について学ぶことができます。
12時24分 足尾駅を発車します。すると、客車チャイムのハイケンスのセレナーデが車内に流れ、足尾駅の到着放送が行われました。
そしてS字カーブを描き、ゆっくりとトロッコわたらせ渓谷号の終着:足尾駅に入線します。
終着:足尾駅に到着 折り返し作業で衝撃的な光景が
12時27分 足尾駅に到着 約1時間半の客レの旅が終わりました。
乗客の降車が確認されると、一旦:間藤駅方向に向けて発車していきます。
少しすると客車を先頭に、推進運転で貨物側線として使われていた留置線にやってきました。
列車は、甲高いフランジ音を立てて、ゆっくりと近づいてきます。
留置線に到着後、DE10はエンジンを切り、大間々行きとして折り返すための準備が行われていました。
13時31分発 大間々行きが発車すると…
入換信号機が進行を現示し、もう一度、間藤駅方向に発車していきます。
再び推進運転で、到着を待つ乗客に見られながら、駅舎側のホームに入線です。
ホームに到着後、機関車の付け替え作業のため、客車から切り離され、牽引機のDE10のみが間藤駅方向へ移動します。
そして、駅舎と反対側のホームから、客車の横を通り抜けていきます。
足尾駅の大間々・桐生側には、入換信号機または入換標識が存在しません。
また、大間々・桐生側から、駅舎側ホームに入線する場内信号機が無いため、ポイントを手動で転換させる必要があり、
そのポイント転換を行う係の手旗信号を頼りに、大間々・桐生側に出ます。
この入換では、無線と手旗信号を活用して、機関車の着回しを行っているのです。
駅舎側ホームへの入線準備が整うと、再びゆっくりと客車に近づいていきます。
機関車と客車、双方のブレーキ管の接続準備が行われ…
ブレーキ管を接続し、貫通しているのを確認すると、ようやく乗車することができます。
機関車が客車を連ねている写真をようやく撮影できました。
茶色と黄色で統一された美しい編成、貫禄があって非常にかっこいいですね…
13時57分 トロッコわたらせ渓谷4号は、大間々行きとして折り返し発車しました。
そして、エンジン音が響いていた足尾駅は、静まり返ります。
駅構内には、旧国鉄足尾線での営業に使われたキハ30や、貨物に使われる車掌車・タンク車が展示されています。
足尾銅山に携わった、古河鉱業の機関車も展示されています。
この足尾駅は、1912年(大正元年)に建てられた、開業以来ずっと使用されている駅舎で、国の有形文化財に登録されています。
「トロッコわたらせ渓谷号」を往復乗車する際は、足尾駅の展示車両や駅舎などをじっくり見て、折り返しを待つといいかも知れません。
おわりに
DE10が牽引する12系の普通客レ・急行客レが、どういう雰囲気だったかを、のびのびした車内、美しい渓谷と紅葉とともに体験出来て、非常に楽しかったです。
珍しい存在になった客車列車。SL列車や臨時のDL列車・EL列車など、どこも大変人気で、興味があってもなかなか乗る機会が無いと思います。
このトロッコわたらせ渓谷号は、4月~11月期間の毎週末、週によっては週3回~4回も走っていて、さらに観光客が少なく、車内は自由席で空いていて、いつでも誰でも乗ることができる貴重な列車です。
客車列車に興味がある方、DE10が興味がある方、超穴場なので、乗りに行ってみてはいかがでしょうか?
今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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